2010年10月29日金曜日

種牝馬の産駒

それが、距離を四〇〇メートルだけのばし、紛れの少ない広い東京コースで再び対戦する。だからみんながチャンス・ナンバーワンと支持する一番人気馬は圧倒的に強いのだと。もっとも起こりうるだろう結果やパターンを推理するデータ活用法は、日本ダービーの意味するところと同じように、根幹のビッグレースや、特徴ある重賞競走でこそ意味を持ってくる。「一二月の有馬記念では、最近一〇年のうち九回まで、ヘイルトゥリーズン系の種牡馬の産駒が連対している」とか、「七月の七夕賞ではもう二六年間も京王杯2歳S予想で考えると一番人気馬が勝てないでいる」など。理由がある。だが、レースの格が落ちるごとに、データの持つ意味は低下していく。過去一〇年間の未勝利戦一万五〇〇〇レースの一番人気馬の勝率はだいたい五割強である。これはデータベースが豊富で、かつ、導き出された結論が単純だから意味する要素はささいでも、信頼に足りる。ところが、便宜上それを望むフアンが少なくないため、「??特別」や「××ステークス」の最近五?一〇年の「データ室」などというコーナーが、紙面に載ることがある。これは、作成する側もたまらないが、正直ほとんど意味がないことが多い。重賞の一〇年間ならまだ多少の意味するところや、明らかな(理由のある)傾向を導き出すことも能だが、「??特別」は毎年同じ条件で行われているとは限らない。何度も距離やクラスが変更されるのがふつうで、それを五回、 一〇回並べたところで、ほとんど意味するところがないのである。

競馬の頂点を考えてみた

過去四〇年と聞くと、それは長い年月には違いないが、ダービーは年に一回だけ。したがって、四〇年間に四〇回行われたにすぎない。その四〇回の結果からデータは成立するか。法則らしきものを導き出すことができるだろうか。単に四〇回という数字は、ふつうの感覚でいくと、データを引き出すのにあまりに小さな数字にすぎず、偶然の積み重ねや、たまたまの結果が重なっただけにとどまる危険はある。データベースとしてはきわめて少ない分量といわざるをえない。ただし、競馬の頂点の一つに位置する京王杯2歳ステークス予想でも日本ダービーは、未勝利戦の四〇レースとは明らかに異なっている。出走馬の色彩は毎年ほとんど同じ。競馬にかかわる要素がことごとく凝縮されて詰まっている。その四〇レースには、何十倍、何百倍ものレースの重みが積み重ねられている。したがって、さらに短縮して、過去一五年間の日本ダービーの一番人気馬は〔10410〕。連対率九三パーセントに達する、などという「データ室」も成立する。データを活用したり、また信頼に足りると考えるには、「なぜ」「どうして」の理由が明らかにされなければならない。たまたまの偶然ではないのだ……と。日本ダービーは、すでにトップクラスの大半が二月ごろから対戦を始め、四月の皐月賞二〇〇〇メートルで、ほとんどの有力馬が対戦している。どの馬がチャンピオンなのか、もう(だいたい)判明している。